8/15 暗幕のゲルニカ
- 公開日
- 2016/08/15
- 更新日
- 2016/08/15
校長室より
ピカソの「ゲルニカ」は皆さん知っていますね。スペイン内線の時、ゲルニカが空爆されたことにショックを受けたピカソが描き上げた傑作です。その「ゲルニカ」をめぐるアートサスペンスが「暗幕のゲルニカ」です。
2001年9月11日、アメリカで起こったテロを発端に、テロとの戦いが始まりました。アメリカ軍はイラクへの侵攻を決定し、その報道を国連本部で行いました。そのとき、国連本部のロビーに掲げられているゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられていた。いったいなぜ?
物語はこのようにして始まります。
ピカソが生きた時代と現代(2003年)を織り込みながら、物語は語られていきます。真実とフィクションが上手にミックスされた素晴らしい作品だと思います。
この物語の最後に、こんな言葉が出てきます。
少し長いですが、紹介します。
テロで傷ついたニューヨーク市民のために、また、戦争に巻き込まれてしまった罪なき人々のために、いったいアートはなにができるのか−その思いは、ピカソが生涯を通じて抱き続けた気持ちと同じではないか。自分もまた、ニューヨークに生を享けた美術館のキュレーターとして、展覧会を通して問いかけ、そして答えたい。−ピカソいわく、芸術は、決して飾りではない。それは、戦争やテロリズムや暴力と戦う武器なのだ、と。その言葉を発展的にとらえれば、アートとは、人間が自らの愚かな過ちを自省し、平和への願いを記憶する装置であると言えるのではないか。
アートに込めた思い、そして、平和への願いが、この本全体を通して、織りなされています。ぜひ、一度読んでみてはいかがでしょうか。
また、作者である原田マハ氏は、「楽園のカンヴァス」でも、アートを題材としたミステリーを書いています。こちらも、なかなか面白いと思いますよ。